金(XAU/USD)が8営業日連続で下落し、3月23日時点で4,388ドルまで値を下げた。直近1週間の下落幅は40年以上ぶりの大きさとなった。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)はこの急落を「2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックと酷似した流動性危機」と指摘し、金市場に異例の警告を発した。
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なぜ金は8日連続で下がったのか ― 3つの構造要因
第1の要因は、実質金利の急上昇だ。米10年債利回りは一時4.42%と2025年7月以来の高水準に達し、CME FedWatchによる年内利上げ確率は40%まで上昇した。金は利息を生まない資産であるため、金利が上がると保有コストが増え、投資家は金を売って利回りのある国債などに資金を移す。米国債2年利回りの利上げ織り込みに関する記事でも報じたとおり、利下げ期待は完全に消滅し、利上げへの転換が金の最大の逆風となっている。
第2の要因は、中央銀行が金の「売り手」に転落したことだ。Kitcoが伝えたNatixisのBernard Dahdah氏の分析によると、一部の中央銀行がイラン戦争に伴うエネルギー購入資金の確保や自国通貨の防衛のために金を売却している。2022年以降、中央銀行は金の最大の買い手であり続けたが、その構図が崩れつつある。昨年の金上昇を支えた2大ドライバー ―「中銀の金購入」と「FRBの利下げ期待」― が同時に反転したのだ。
第3の要因は、ETFからの大規模な資金流出だ。世界最大の金ETFであるGLDからは、3月19日だけで推定29億ドルが流出した。これは10年超ぶりの規模であり、機関投資家が組織的に金のポジションを縮小していることを示す。
WGCが警告する「流動性危機」とは何か
Kitcoが報じたWGCのレポートは、今回の金急落が単なる価格調整ではなく、流動性危機の兆候を示していると指摘した。WGCは「市場の動きの速さと幅は、流動性がファンダメンタルズを支配した2008年と2020年のリスクオフ局面と酷似している」と述べている。
流動性危機とは、投資家が一斉に現金化を求めた結果、売り手ばかりになって買い手がいなくなる状態を指す。具体的な連鎖はこうだ。原油高とインフレでオルタナティブ資産ファンドの評価額が急落する。投資家が償還(解約)を請求する。しかしファンドの資産は簡単には売れないため、償還制限(ゲーティング)を発動する。Morgan Stanleyのあるファンドは償還請求の45.8%しか応じられず、Cliffwaterのファンドも約50%しか充足できなかった。現金が足りない投資家はマージンコール(追加証拠金の請求)に対応するため、最も流動性の高い資産 ― つまり金 ― を投げ売りする。
金は通常「安全資産」として危機時に買われる。しかし2008年のリーマンショックでも2020年のコロナショックでも、危機の初期には金が急落した。理由は「現金が必要な投資家が、売れるものを何でも売る」からだ。金は市場が大きく取引コストが低いため、真っ先に換金対象になる。WGCはこのパターンが今回も再現されていると警告している。
市場・経済への波及 ― 金だけの問題ではない
銀も連動して急落している。銀は日中安値60.89ドルをつけ、3月の高値から約20%下落した。金と銀が同時に急落するのは、貴金属市場全体から資金が引き揚げられている証拠だ。金4,500ドル割れの記事で指摘した下落トレンドは、テクニカル要因だけでなく、こうした構造的な売り圧力が背景にある。
投資銀行のスタンスは分裂している。Natixisは短期の下値ターゲットを4,000ドルと設定する一方、エネルギーインフラへの被害が限定的で原油が下落すれば5,000ドル超への回復もあり得るとしている。ソシエテ・ジェネラルは金の配分を10%から7%に削減したが、年末目標6,000ドルは維持した。UBS・JPモルガンの年末6,000ドル予想を含め、長期強気と短期のリスク管理を両立させようとする姿勢が目立つ。
生活への影響 ― 金投資家は何を考えるべきか
金積立・金ETFの評価額は大幅に目減りしている。3月の高値から約20%の下落は、100万円の金投資が80万円になった計算だ。ただし過去の流動性危機(2008年、2020年)では、初期の急落後に金は数カ月で急反発している。2020年3月にはコロナショックで金が1,450ドルまで急落したが、同年8月には2,000ドルを超えた。
トランプ大統領がイラン空爆の5日間停止を発表したことが変数だ。金は一時8.8%安から2%安まで戻した。停戦が実現すれば原油が下落し、インフレ圧力が緩和され、利上げ期待が後退し、金にとっては回復要因となる。逆に停戦が崩れれば、原油再高騰→インフレ加速→金利上昇→金売りの連鎖が再び始まる。
今後の注目点
第一に、イラン情勢の推移だ。5日間の攻撃停止が恒久的な停戦に向かうかどうかが、原油価格と金利見通しを左右する。原油乱高下の記事で分析したホルムズ海峡の地政学リスクは依然として最大の変数だ。
第二に、CFTC建玉データだ。金のネットロングは約16万枚と相対的に低い水準にあり、投機的なロングポジションの整理はかなり進んでいる。ここからさらにロングが減れば「売り疲れ」のシグナルとなり、反転の手がかりになる。
第三に、次のGLD ETFの資金フローだ。3月19日の29億ドル流出のような大規模な資金移動が続くかどうかが、機関投資家のセンチメントを測る指標となる。
個人投資家が意識すべき3つのポイント
1. 流動性危機での金の急落は「過去にも起きた一時的現象」と認識する。WGCが比較した2008年と2020年の事例では、金は危機の初期に急落した後、数カ月で新高値をつけている。パニック売りに巻き込まれず、自分のリスク許容度の範囲で判断することが重要だ。
2. 中央銀行の動向を中長期の指標として注視する。中央銀行が買い手から売り手に転じたのは、戦時下の一時的な資金繰りである可能性が高い。停戦後に中銀の金購入が再開されるかどうかが、長期トレンドの分岐点となる。投資銀行の年末予想が6,000ドル超を維持している点も、中銀の買い再開を織り込んだものだ。
3. 金投資の比率が自分のポートフォリオの過大部分を占めていないか確認する。ソシエテ・ジェネラルが10%から7%に配分を減らしたように、プロの投資家でも短期のボラティリティリスクに対応してポジションを調整している。金への過度な集中はリスクが高い。分散投資の一環としての金の位置づけを再確認すべき局面だ。
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