金(ゴールド)の価格が大きく動いた。DailyForexの週次分析(2026年4月19日公開)によると、4月17日(金)にホルムズ海峡の停戦合意を受けて金は4週間ぶり高値の1トロイオンスあたり4,887ドルまで上昇した。しかし週明けの4月19〜20日には利確売りが入り、4,750〜4,784ドル台へ反落している。なぜ停戦ニュースで金が急騰し、そして週明けに急落したのか——連鎖を1ステップずつ追う。
ホルムズ停戦でなぜ金が急騰したのか
4月17日、イランが「停戦期間中はホルムズ海峡を完全開放する」と宣言した。ホルムズ海峡は世界の石油輸送の約20%が通る要衝で、軍事的緊張が続く間は「原油供給が途絶えるかもしれない」という不安が相場を支配していた。停戦宣言がこの不安を解消し、原油市場・為替市場・金市場に連鎖反応を引き起こした。
連鎖を順に追ってみよう。第一に、原油価格が急落した。「供給途絶リスク」がなくなったためだ。第二に、ドルが同時に下落した。有事の局面では「安全資産」として買われやすいドルが、リスク緩和とともに売られた。
金は国際的にドル建てで取引される。ドルが下がると、ドル以外の通貨を持つ投資家にとって金が「割安」になり、買い需要が増える。「ドル安=金高」という関係は為替と商品価格の基本的な連動だ。円建てで金を保有している日本人投資家は、ドル建て金価格に加えて円ドル為替レートの影響も同時に受ける。
原油急落は米国のインフレ鈍化を示唆するため、FRB(米連邦準備制度)の利下げ期待も同時に高まった。金利が下がると、利息を生まない資産である金の相対的な魅力が増す。つまり「停戦→原油安→ドル安→利下げ期待上昇→金買い」という連鎖が4月17日に一気に発火し、4週間ぶり高値の4,887ドルをつけた。
週明けに約2%反落した2つの理由
しかし週明けの4月19〜20日には、金は4,887ドルから4,750〜4,784ドル台へと反落した。前日比で約1〜2%の下落だ。主因は2つある。
第一は「利確売り」だ。4週間ぶり高値という水準まで上昇した後、利益を確定させたい機関投資家が一斉に売りに動いた。急騰後の調整は「高値を確認してから売る」という機関投資家の典型的な行動パターンだ。第二は「ドルの回復」だ。停戦直後はドルが売られたが、週明けにドルが反発し、ドル高→金安のメカニズムが働いた。
4,600ドルのサポートと5,000ドルの壁——今週の注目ライン
DailyForexの週次分析では、現在の金の取引レンジは4,600〜5,000ドルとされており、4,600ドルが主要なサポートライン(これを下回ると大きく売られるライン)、5,000ドルが次の上値目標となっている。現在の4,750〜4,784ドル台は、このレンジのほぼ中央にあたる。
今週(4月20〜26日)の金価格を動かす材料は主に3つある。第一に、ホルムズ停戦の継続性だ。停戦が崩れれば地政学リスクが再燃し、金は再び買われやすくなる。第二に、4月23日発表の米欧製造業・サービス業PMI速報値だ。PMIが予想を下回れば景気後退懸念が強まり、FRBの利下げ期待が再燃して金にプラスに働く。第三に、4月30日のFRB政策会合だ。現在の政策金利は3.50〜3.75%で据え置きが有力だが、その後の記者会見での発言トーンが金の方向性を左右する。
私たちの生活にどう関係するか
円建てで金を保有している個人投資家にとっては、ドル建て価格と円ドル為替レートの両方が影響する。4,887ドルから4,750ドルへの下落(約2.8%)はドル建てでの変化だ。同じ期間に円高が進んでいれば、円建ての損失はさらに拡大する。一方で円安が継続していれば損失が和らぐケースもある。
純金積み立てや金ETFに投資している方は、今週のドル円相場と金のドル建て価格の動きを両軸で確認しておきたい。今回の急騰→反落は「有事の金」の特性を示す典型例だ。地政学リスクが高まると一気に上昇するが、停戦・緊張緩和で利確売りが出やすく、短期の価格変動は大きい。長期保有の視点は崩さずに、大きな動きのタイミングには注意を払うことが重要だ。なお金市場の構造変化については、LBMAとWGCが進める金のHQLA認定ロビー活動も中長期的な機関需要に影響する可能性がある。
今後の注目点
第一に、ホルムズ停戦の持続性だ。停戦が崩れれば4,887ドルを上回る水準への再上昇シナリオが現実味を持つ。第二に、今週のPMIと来週のFRB会合だ。両方が「利下げ期待を強める」方向に出れば、金の下落余地は限られる。第三に、中央銀行の動向だ。トルコやロシアが外貨準備の補填のため金を売却する動きが続いており、これが金価格の上値を抑える構造的な要因になっている。
個人投資家が意識すべき3つのポイント
① 「有事の金」は停戦後に反落しやすい
地政学リスクが高まると急騰する金は、停戦・緊張緩和のタイミングで利確売りが出やすい。「停戦ニュースで金が下がる」という逆説的な動きを知っておくと、相場の動きに惑わされにくくなる。
② ドル建て価格と円建て価格の両方を確認する
円建ての金価格はドル建て金価格と円ドル為替レートの掛け合わせで決まる。ドル建てで上昇していても同時に円高が進んでいれば、円建てでは下落するケースもある。金の投資判断では必ず円換算後の価格も確認しよう。
③ 4,600ドルのサポートと5,000ドルのレジスタンスを意識する
アナリストが設定する4,600ドルのサポートラインと5,000ドルのレジスタンス(上値抵抗)が今週の目安だ。4,600ドルを大きく下回れば追加の損切りを検討するライン、5,000ドルを突破すれば次の上昇フェーズへのシグナルとなる。

