2026年5月13日早朝のドル円相場は1ドル=157円66銭で取引が始まった。前日比は0円16銭の円安・ドル高、年初比では1円10銭、1年前の2025年5月13日(147円30銭)と比べると10円36銭の円安水準である。日本経済新聞によると、12日のニューヨーク市場では4月の米消費者物価指数が市場予想を上回ったことを受けて円が3日続落し、1ドル=157円55〜65銭で取引を終えた。同日に都内で開かれた日米財務相会談で円安への明確な牽制が示されなかったことも、円を売る材料として意識された。
日米財務相会談は「けん制の弱さ」、米CPIも再加速
5月12日のドル円は二つの材料で動いた。一つは同日に行われた日米財務相会談で、ベッセント米財務長官が高市早苗首相、片山さつき財務相、植田和男日銀総裁と相次いで会談した。市場は日米連携での円安けん制を期待していたが、ベッセント氏は会談後のX投稿で「過度な為替変動への対応について日米の意思疎通は強固」と述べるにとどめた。日経は「日米連携試す円じり安 けん制の弱さ『期待外れ』」と総括している。
もう一つは米国の4月消費者物価指数である。ブルームバーグは同指数が前年同月比3.8%と市場予想3.6%を上回り、ガソリンと食品が押し上げ要因になったと報じた。米連邦準備理事会(FRB)が想定する利下げ時期が後ずれするとの見方が強まり、米長期金利が上昇、ドル買い圧力につながった。
4月30日に政府・日銀が5兆円規模の円買いドル売り介入を実施し、一時1ドル=155円台まで急騰した。しかしその後は再び157円台へ戻し、介入の効果は限定的との評価が広がっている。市場関係者の多くは「1ドル=160円が政府の防衛ライン」と認識しており、介入の弾は残っているものの神経戦が続く構図である。
JTB集計のGW海外旅行費用は32.9万円——夏休みはさらに重い負担
円安が家計に直接効いてくる代表例が、これから本格化する夏休みの海外旅行である。JTBが4月2日に公表した2026年ゴールデンウィークの旅行動向調査によると、海外旅行の1人あたり平均費用は32万9,000円で、前年同期比102.2%だった。海外旅行者数は57万2,000人(前年比108.5%)、総消費額は1,882億円(前年比110.9%)で、人数の伸び以上に金額が膨らんでいる。1人あたり費用の上振れは円安と現地物価高の双方の影響である。
夏休み発券分の航空券にはさらに重い数字が乗ってくる。JALは2026年5月〜6月発券分の燃油特別付加運賃をすでに引き上げており、北米・欧州路線では片道3万円台の水準にある。業界紙の試算では、原油価格と為替がこのまま推移した場合、7月発券分は現行の1.5倍から2倍まで上がる可能性がある。家族4人で北米・欧州を往復するケースを単純計算すると、燃油サーチャージだけで往復20万円を超える試算もあり、航空券本体、ホテル、現地での食事や移動を含めれば1家族で10万円規模の追加負担は珍しくない。
観光庁の宿泊旅行統計でも、ホテルの平均客室単価は26か月連続の上昇となり、訪日外国人の需要と円安が国内宿泊サービスの価格も押し上げている。海外旅行をやめて国内に切り替えても、円安の影響から完全に逃れることは難しい。
食品・留学・保険——円安の波及は旅行だけではない
食卓にも円安が忍び寄っている。山崎製パンは4月28日、7月1日出荷分から食パンや菓子パンなど306品目を平均5.6%値上げすると発表した。食パン類62品目は平均6.6%の値上げで、原材料費や輸送費の上昇に加え、中東情勢の悪化に伴う包装材価格の高騰を理由として明記している。帝国データバンクの集計では、2026年4月だけで2,798品目の食品値上げが実施されており、家計の食費は静かに押し上げられている。
子どもの留学費用や外貨建て保険にも影響が出る。米国の有力私立大学の年間学費は約5万ドル水準で、1ドル=147円なら735万円だが、157円なら785万円となり、為替が10円動くだけで年間50万円の差が出る計算である。同じことは外貨建ての生命保険や年金保険にも当てはまり、保険料を円で払い続ける契約者にとって円安はそのまま負担増になる。
これらは派手な値上げニュースのように一斉に取り上げられないが、生活費全体に対する円安の影響を考えるうえで無視できない要素である。
6月日銀会合と160円の防衛ライン——どこまで続くのか
市場の目線は6月16〜17日に予定される日銀金融政策決定会合に移っている。日銀は昨年12月に0.75%への利上げを決定して以降、1月、3月、4月の3会合連続で政策金利を据え置いてきた。次回6月会合では0.25%の追加利上げを予想する声が増えており、年内に1.25%まで到達する可能性も意識されている。三井住友DSアセットマネジメントは5月12日付のレポートで、為替介入の余地は残るものの、最終的にはFRBと日銀の政策金利差が縮まらない限り円安基調の修正は限定的だと整理している。
大手金融機関の年末ドル円見通しは円高方向に修正されつつある。野村証券は2026年末で1ドル=152円台、三井住友DSアセットマネジメントは150円程度を見込む。それでも現在の157円台と比べれば5〜7円の修正に過ぎず、過去10年スパンで見れば円安水準が常態化していることは変わらない。
家計が円安局面で取れる選択肢
家計レベルでできることは大きく三つある。一つは固定費の円安連動部分を点検することで、輸入比率の高い食品や燃料、海外サービスの利用頻度を見直す。二つ目は外貨資産の比率である。すでに円建ての貯金や日本株が中心の家計は、必要に応じて外貨建てMMF、米国株インデックスファンドなどでドル資産を一部保有するという選択肢がある。三つ目は為替の動きが大きい局面ほど、まとめて買い物や両替をせず、時期を分散することである。
個人投資家が意識すべき3つのポイント
一つ目は、ドル円の水準そのものよりも前年同日比の方が生活実感に近いという点である。2026年5月13日の157円66銭は、2025年同日の147円30銭と比べて10円超の円安であり、海外旅行や輸入品の負担は1年前と地続きで増えている。
二つ目は、6月の日銀会合と米国のインフレ動向を同時に追うことである。日銀が利上げに動いても、米国のインフレが再加速すれば日米金利差は縮まらず、ドル円の水準訂正は限定的にとどまりやすい。
三つ目は、家計の円安リスクを完全にゼロにする方法はないと割り切ることである。外貨資産の比率を少しずつ上げる、固定費を見直す、消費の時期を分散させるという複数の対応を組み合わせることが、為替局面に振り回されないための現実的な備えになる。

