イーサリアム(ETH)が3月16日、前日比10%高の2,300ドル台に急伸した。ビットコイン(BTC)の同日の上昇率が3%にとどまるなか、ETHは6週間ぶりの高値を記録。暗号資産市場では「BTCからETHへ」の資金ローテーションが始まったとの見方が広がっている。
ETH急騰の3つのエンジン — ETF・企業買い・ステーキング
今回のETH急騰を支えたのは、3つの資金フローだ。
第一に、ETFへの資金流入が加速している。CoinDeskによると、米国のスポット型イーサリアムETFには先週だけで1.6億ドル(約255億円)が流入し、1月中旬以来の高水準となった。BlackRockが新たに立ち上げたステーキング付きイーサリアムETF「ETHB」も、取引開始からわずか2日で4,500万ドルの純流入を記録。シード投資を含めると1.5億ドル規模の資金を集めている。
第二に、企業によるETH大量購入が目立つ。マイニング企業Bitmine(BMNR)は過去2週間で約12.2万ETH(約2.8億ドル相当)を追加取得し、保有量は459.6万ETH(ETH総供給量の約3.8%)に達した。うち304万ETHはステーキングに回され、年間約1.8億ドルのステーキング収益を生み出しているという。247 Wall St.が報じたところでは、BMNR株はこの日11%上昇した。
第三に、アルトコイン全体のリスクオンだ。CoinDesk 20指数は約5%上昇し、Polkadot(DOT)は8.5%高、ミームコインのPEPEは10%超の上昇を記録。投資家がBTCの安定を確認した後、より高リターンを求めてアルトコインに資金を振り向ける「バーベル戦略」が活発化している。
| 銘柄 | 3/16 騰落率 | 主な材料 |
|---|---|---|
| ETH | +10% | ETF流入、Bitmine買い、ステーキングETF |
| BTC | +3% | 7.5万ドル接近、50日移動平均線上抜け |
| DOT | +8.5% | CoinDesk 20指数の上昇牽引 |
| PEPE | +10%超 | ミームコインへの資金流入 |

T. Rowe Price「1.8兆ドルの巨人」がミームコインETFを申請
ETHの急騰と同日、暗号資産ETFの世界でもう一つの大きな動きがあった。運用資産1.8兆ドル(約287兆円)を誇る米大手資産運用会社T. Rowe Priceが、ドージコイン(DOGE)や柴犬コイン(SHIB)を含むアクティブ運用型暗号資産ETFをSECに申請したのだ。
CoinDeskの報道によれば、同ETFはBTC、ETH、ソラナ、XRP、カルダノ、ライトコイン、DOGEなど幅広い暗号資産から5〜15銘柄を選び、量的モデルを用いてFTSE US Listed Crypto Indexの上回りを目指す。カストディはAnchorage Digital Bankが担う。
これまでの暗号資産ETFはBTCやETHの「単一銘柄型」が中心だった。大手運用会社がミームコインまで含むマルチアセットETFを申請したことは、暗号資産ETFが「第2フェーズ」に入ったことを示している。承認されれば、証券口座からドージコインに間接的にアクセスできる時代が到来する。
注目すべきは、同ファンドが「パッシブ型(指数連動)」ではなく「アクティブ運用型」である点だ。量的モデルに基づいて銘柄を入れ替える設計で、暗号資産市場特有のボラティリティに柔軟に対応する狙いがある。伝統的な資産運用の手法が暗号資産にも本格的に持ち込まれた形だ。
「BTCからETHへ」のローテーションは続くのか
ETHが対BTC比率で明確なブレイクアウトを見せたことで、アナリストの間では「ローテーション相場」への期待が高まっている。CoinDeskは「ETHの対BTCブレイクアウトは、より広範な市場ローテーションの兆候かもしれない」と指摘した。
背景には、BTCが2月の底値から約25%反発し、7.5万ドルに迫る水準まで回復したことがある。BTCの値動きが安定するにつれ、投資家のリスク選好が高まり、ETHやアルトコインへの資金シフトが起きているのだ。Strategy(旧MicroStrategy)のマイケル・セイラー会長は先週15.7億ドル相当のBTCを追加購入し、保有量は76.1万BTCに達したとCoinDeskが伝えている。一方、日本のMetaplanetも2.55億ドルの資金調達を実施し、BTC保有を21万BTCまで拡大する計画を公表した。「ビットコイン・トレジャリー企業」の動きがBTC価格を下支えし、それがアルトコインのローテーションを後押しする構図だ。
ただし、今週はFOMC(3/17-18)と日銀会合(3/18-19)という2大中央銀行イベントが控える。FRBが利下げ見通しを後退させれば、リスク資産全体に逆風が吹く可能性がある。CME FedWatchでは据え置き確率が92%超だが、焦点はパウエル議長の会見とドットプロット(金利予測分布図)の修正内容だ。
| シナリオ | ドットプロット | ETH/アルトへの影響 |
|---|---|---|
| ハト派(利下げ年2回維持) | 中央値3.25% | リスクオン継続、ETH上昇加速 |
| 中立(利下げ年1回へ縮小) | 中央値3.50% | 短期調整後に横ばい |
| タカ派(利下げなし示唆) | 中央値3.75% | リスクオフ、アルト急落リスク |
個人投資家が意識すべきポイント
第一に、ETHの急騰は「出遅れ修正」の側面が強い。年初来でBTCがプラス圏を維持する一方、ETHは依然として2024年末の水準を大きく下回っている。今回の上昇でようやく50日移動平均線を上抜けた段階であり、持続的な上昇トレンドが確認されたわけではない。
第二に、Bitmineのような企業の大量買いは諸刃の剣だ。ETH総供給量の3.8%を1社が保有する集中リスクには注意が必要だ。仮にBitmineが売却に転じれば、市場に大きな下押し圧力がかかる。SharpLink Gaming(SBET)などETHを財務資産として保有する企業も増えており、SBETはこの日9.1%上昇した。企業のETH保有が市場にプラスに働く局面とマイナスに転じる局面を見極める力が求められる。
第三に、FOMC後の値動きに備えること。3月18日の政策発表(日本時間19日午前4時)で市場のセンチメントが大きく変わる可能性がある。特にドットプロットが「年内利下げなし」を示唆した場合、アルトコインは急落リスクを抱える。ポジション管理には慎重を期したい。

