3月12日、ダウ平均は739ドル安(-1.56%)で2026年の最安値を更新した。S&P 500は-1.52%、ナスダックは-1.78%。原油100ドル突破を受けた全面安だ。
ところが、ビットコインは下がらなかった。同日中に72,000ドル付近まで回復し、翌13日も71,000ドル台を維持。イーサリアム、ソラナ、カルダノもそろって上昇している。株が売られる中で暗号資産だけが逆行する──この動きをどう読むべきか。
株との「デカップリング」は本物か
CoinDeskは3月13日、興味深い分析記事を掲載した。タイトルは「ビットコインの暴落は株の下落を先に警告していた。今、株がそれに追随している」。
時系列を振り返ると、この指摘には一定の根拠がある。ビットコインは2025年10月に126,000ドルの史上最高値をつけたあと、2026年2月には67,000ドルまで約47%下落した。一方、株式市場が本格的に崩れ始めたのは3月に入ってからだ。ビットコインが先に調整を終え、株がようやくその下落に追いついた、という見方になる。
そして今回、株が急落する中でビットコインは70,000ドルの水準で踏みとどまった。3月のビットコインETF(上場投資信託)への資金流入は累計7億ドルを超えており、機関投資家が「株とは別の資産」としてビットコインを買い続けている様子がうかがえる。
ただし「安全資産」と呼ぶのは早い
一方で、慎重な見方も存在する。暗号資産取引所Phemexのデータ分析(3月12日付)は、「歴史上のすべての主要な危機において、ビットコインが短期的な安全資産として機能したことはない」と指摘する。
実際、2020年のコロナショックではビットコインは一時50%下落し、2022年のウクライナ侵攻でも株と同様に売られた。2026年2月にトランプ大統領が関税を15%に引き上げた際にも、ビットコインは株式と一緒に急落している。
今回の「株暴落でもBTCは耐えた」という事実が、構造的な変化の始まりなのか、それとも一時的な現象にすぎないのか。その答えは、来週のFOMC(3月18日)や日銀会合(3月18〜19日)で利下げ期待が後退した場合に、ビットコインがどう反応するかで見えてくるだろう。
BlackRock「ステーキングETF」が示す機関投資家の本気度
株と暗号資産の関係が変化しつつある背景には、機関投資家の参入加速がある。その象徴が、3月12日にNasdaqに上場したBlackRockのiShares Staked Ethereum Trust(ETHB)だ。
ETHBは従来のETH ETFとは異なり、保有するイーサリアムの70〜95%をステーキング(ネットワーク運用への参加)に回し、得られた報酬の82%を月次で投資家に分配する。つまり「値上がり益」と「年利3〜4%のインカム」を同時に狙える商品だ。初日の出来高は1,550万ドル、運用資産は約1億ドルでスタートした。
BlackRockはすでにビットコインETF(IBIT)で550億ドル超の運用資産を積み上げている。そこに「利回りが出るイーサリアムETF」を追加したことで、暗号資産を株式や債券と同列に扱う機関投資家の層はさらに厚くなる。こうした構造的な買い手の存在が、今回の「株暴落でもBTCは下がらない」現象の一因かもしれない。
SECもトークン化証券を後押し
制度面でも動きがあった。3月12日、SEC(米証券取引委員会)の投資家諮問委員会がブロックチェーン上で株式をトークン化するための規制緩和を推進する勧告を採択した。情報開示の義務化や外部監督を条件に、トークン化された株式証券に「限定的な免除」を与える方向だ。
アトキンスSEC委員長は「業界に方向性を示すプロセスはすでに進行中」と述べている。同じ日に米上院がCBDC(中央銀行デジタル通貨)の禁止条項を含む法案を可決したことと合わせると、米国の方針は明確になりつつある。政府発行のデジタル通貨には否定的だが、民間主導のトークン化やステーブルコインには前向き、というスタンスだ。
RWA(現実世界資産)のトークン化市場にとっては強力な追い風であり、今後、株式・債券・不動産などがブロックチェーン上で取引される流れが加速する可能性がある。
個人投資家が意識すべきポイント
1. 「ビットコイン=安全資産」と決めつけない
今回は株と逆行したが、過去には一緒に暴落した局面のほうが多い。リスク分散の一つとして持つのは合理的だが、「株が下がるからBTCを買う」という単純な判断は危うい。
2. ETF経由の資金流入を追う
BTC ETFへの月間フローは、機関投資家のセンチメントを測る有力な指標だ。3月は7億ドル超の流入が続いており、この数字が維持されるかどうかに注目したい。
3. 来週のFOMC・日銀が試金石
3月18日のFOMCでコアPCE上振れを受けた利下げ後退が示唆されれば、リスク資産全般に売り圧力がかかる。そのとき、ビットコインが再び株と同じ方向に動くのか、それとも今回のように耐えるのか。この「答え合わせ」が、2026年後半の投資戦略を考えるうえで重要な判断材料になる。
※当サイトに掲載する情報は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品、為替、貴金属等への投資、取引、または売買を勧誘・推奨するものではありません。投資および取引には価格変動等のリスクが伴います。当サイトの情報を利用したことにより生じた損失、損害、トラブル等について、当サイトおよび運営者は一切の責任を負いかねます。最終的な投資判断は、必ず読者ご自身の判断と責任において行ってください。

