日銀が持っている国債の割合が、発行残高全体の49%に低下した。50%を下回るのは約3年ぶりだ。2025年12月末時点の保有残高は503兆円。つい最近まで国債市場の「過半数」を日銀が占めていたが、ようやくその比率が下がり始めた。
日本経済新聞によると、日銀が国債の購入を減らす一方で、日銀の代わりに国債を買ってくれる「次の買い手」(個人投資家や海外の機関投資家など)がまだ十分に育っていないという。この記事では、なぜ日銀は国債を減らしているのか、それが私たちの生活にどう影響するのかを整理する。
国債とは、国(政府)がお金を借りるために発行する「借用証書」のことです。投資家が国債を買う=政府にお金を貸す、ということ。政府は利息を付けて返済します。国債が多く買われると価格が上がり「利回り(金利)」は下がります。逆に、買い手が減ると価格が下がり「利回り(金利)」は上がります。
そもそも日銀はなぜ大量の国債を持っていたのか
話は2013年にさかのぼる。黒田前総裁が始めた「異次元緩和」では、日銀が市場から大量の国債を買い取ることで、世の中に出回るお金の量を増やし、景気を刺激しようとした。企業や銀行が持っていた国債を日銀が買い取り、その代金として新しいお金が市場に流れる仕組みだ。
この政策は10年以上続き、日銀の国債保有比率は52%を超えた。つまり、日本政府が発行した国債のうち半分以上を日銀が1人で抱え込んでいた状態だ。これは世界的に見ても異例で、「中央銀行が国債市場を支配している」との批判もあった。
問題は、日銀が市場の最大の買い手であり続けると、国債の価格(=金利)が日銀の意向で決まってしまい、本来の市場メカニズムが働かなくなることだ。企業や投資家が「この金利水準は適正なのか?」を判断する材料がなくなってしまう。
日銀は国債の購入を半分に減らしている
植田総裁は2024年7月に国債の買い入れを段階的に減らす計画を決定した。2024年前半には月6兆円だった購入額を、2026年1〜3月には月3兆円まで半減させた。四半期(3ヶ月)ごとに4,000億円ずつ減らすペースだ。
日銀が国債を買う量が減れば、国債の値段は下がる(=金利は上がる)。これまでは日銀が「最大の買い手」として国債の価格を支えていたが、その支えが少しずつ外れていくイメージだ。金利が上がること自体は正常な状態への回帰であり、日銀はこれを「金融正常化」と呼んでいる。
今回の「50%割れ」は、この金融正常化が目に見える形で進んでいることの証だ。日銀が国債市場の「主役」から「脇役」へと徐々に退いていく過程にある。
日銀が買わなくなった国債を、誰が買うのか
ここで問題になるのが「受け皿」だ。日銀が毎月3兆円の国債を買い続けていても、かつての6兆円から見れば3兆円の「穴」が開いている。その分を誰かが代わりに買わなければ、国債の価格が下がりすぎて(=金利が上がりすぎて)経済に悪影響が出る。
期待される買い手は3つある。第一は国内の銀行や生命保険会社だ。金利が上がれば国債の利回りも上がるので、「持っていて利益が出る」投資対象として魅力が増す。実際、直近の20年債の入札では順調な売れ行きが確認されている。
第二は海外の投資家だ。日本の10年国債利回りが2.25%を超える水準は、欧州の低金利環境に比べれば十分に高い。ただし海外投資家は為替リスク(円安・円高による損益)を考慮する必要があるため、一筋縄ではいかない。
第三は個人投資家。個人向け国債(変動10年型)は政策金利に連動して利率が変わるため、金利が上がるほどリターンも増える仕組みだ。ただし、個人マネーが国債市場全体に占める割合はまだ小さく、日銀の穴を埋めるには力不足というのが現状だ。
国債の「利回り」と住宅ローンや預金の「金利」は密接に連動しています。日銀が国債を買わなくなる → 国債の買い手が減る → 国債の価格が下がる → 利回り(金利)が上がる → 住宅ローン金利や預金金利も上がる、という流れです。つまり、日銀の国債購入の減少は、私たちの住宅ローンや預金に直接つながっています。
金利上昇は住宅ローンと預金金利に直結する
日銀の国債買い入れ減額は、すでに私たちの生活に影響を及ぼし始めている。日本の10年国債利回りは2.25%、30年国債利回りは3.48%に達している。2年前にはほぼゼロだったことを考えると、大きな変化だ。
住宅ローンへの影響は2つのルートがある。変動型ローンの金利は日銀の政策金利(現在0.75%)に連動するため、日銀が追加で利上げすれば返済額が増える。一方、固定型ローンの金利は長期国債の利回りに連動する。30年債利回りが3.48%ということは、35年固定の住宅ローン金利が3%台に乗る可能性がある。
ただし悪い面だけではない。預金金利も上昇傾向にある。ネット銀行を中心に普通預金金利を引き上げる動きが広がっており、「銀行に預けても増えない時代」は終わりつつある。借りる人にとっては負担増だが、預ける人にとっては朗報だ。
本日の日銀会合結果が次の焦点
本日3月19日には日銀の金融政策決定会合の結果が発表される。政策金利0.75%の据え置きが大方の予想だが、市場の関心は「次の利上げはいつか」に移っている。ブルームバーグのエコノミスト調査では、次の利上げ時期について4月(37%)、6月(22%)、7月(29%)と見方が分かれている。3月18日の春闘集中回答日で5%台の賃上げが確認されれば、「賃金が上がっているからインフレが続く、だから利上げできる」という日銀の論理が強まり、4月利上げの観測が高まる可能性がある。
国債の保有比率50%割れは、日銀が「お金の量」を減らす方向に動いている証拠だ。次は「金利の水準」を引き上げる(=追加利上げする)かどうかが、最大のテーマとなる。
個人投資家が意識すべき3つのポイント
1. 住宅ローンの金利上昇に備える。変動型ローンを利用している人は、日銀がさらに利上げした場合の返済額をシミュレーションしておくべきだ。0.75%から1.0%に上がるだけで、残高3,000万円のローンでは年間の返済額が約4万円増える。
2. 個人向け国債(変動10年)は「守りの資産」として有力。政策金利の上昇に連動して利率が上がる変動10年型国債は、元本保証で途中換金も可能だ。預金よりも高い利回りを得られる可能性があり、金利上昇局面では検討に値する。
3. 銀行株は金利上昇の「勝ち組」。金利が上がると、銀行は預金を集めてより高い金利で貸し出すことができるため、利ざや(預金金利と貸出金利の差)が拡大する。三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクは、金利正常化の恩恵を最も受けやすい銘柄だ。逆に、借入コストが上がる不動産セクターは逆風になる。金利正常化で「誰が得をして、誰が損をするか」を見極める視点が重要だ。
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