中東情勢の緊張を背景に原油価格が急騰している。こうした状況が長引いた場合、日本企業の業績にはどの程度の影響が出るのか。
みずほリサーチ&テクノロジーズが公表した最新レポートは、「原油価格が1バレル=100ドル前後で推移する場合、日本企業の付加価値額は全体で約1.2%減少する」と試算している。
レポートのポイントを、要点だけ整理してみよう。
原油高はすでに企業物価に波及
米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦を受け、ホルムズ海峡の航行リスクやエネルギー施設への攻撃懸念が高まり、原油市場は急激に反応した。
WTI原油価格は2月末には60ドル台だったが、3月初旬には一時119ドルまで急騰。その後やや下落したものの、現在も90ドル台という高水準で推移している。
みずほの分析では、原油価格が上昇すると、日本ではまず石油・石炭製品の企業物価が連動して上昇する。実際、原油価格と企業物価指数(石油・石炭製品)は長期的に強い相関を持つことが確認されている。
つまり原油高は、ほぼストレートに企業のコスト増へつながる。
企業業績への影響は「3つの経路」
レポートは原油高の影響を、次の3つのルートに分解している。
① エネルギーコストの直接増加
企業が使う燃料や石油製品の価格上昇。
② 他産業からの価格転嫁
原材料や輸送費の値上がりが、取引を通じて広がる。
③ 値上げによる需要減少
企業が価格転嫁すると、消費や投資が減る。
つまり原油高は
「コスト増 → 価格転嫁 → 需要減」
という形で経済全体に広がるという構造だ。
製造業は▲2.3%の落ち込み
原油価格が100ドルで推移した場合、みずほは次の影響を試算している。
- 日本経済全体:付加価値▲1.2%
- 製造業:▲2.3%
製造業の打撃が大きいのは、エネルギーや石油製品を大量に使うためだ。
特に影響が大きい業種は次の通り。
- 石油・石炭製品 ▲7.4%
- 化学 ▲6.3%
- 鉄鋼 ▲4.7%
いわゆる素材系・川上産業が強いダメージを受ける。
一方、自動車などの最終製品に近い業種は、エネルギー消費が相対的に少ないため、影響はやや限定的とされる。
非製造業でも影響は広がる
非製造業では次の業種が影響を受けやすい。
- 鉱業 ▲3.2%
- 建設 ▲2.0%
- 運輸・郵便 ▲1.9%
- 宿泊・飲食 ▲1.6%
運輸は燃料コスト、建設は資材価格の上昇、宿泊・飲食は電力や食料価格の上昇など、間接的なコスト増が効いてくる。
ただし医療や教育などエネルギー使用が少ない分野では、影響は比較的小さい。
原油高は「日本経済の下押し要因」
今回のみずほの試算は、原油価格が100ドル程度で安定したケースを想定している。つまり、さらに価格が上昇したり、長期化すれば影響はより大きくなる可能性がある。
資源輸入国である日本にとって、原油価格の高騰は
- 企業コスト増
- 価格上昇
- 需要減少
という形で経済を下押しする。
中東情勢の先行きが見通せない中、原油市場の動きは引き続き日本経済の重要なリスク要因になりそうだ。
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