米国の対イラン軍事行動は、過去に米国を苦しめてきた「中規模戦争(middle-sized war)」へと発展する危険性がある——。米外交誌Foreign Affairsに掲載された論考がこうした警告を発している。
同誌に寄稿した地政学アナリストのロバート・D・カプラン氏は、米国の対外戦争の歴史を振り返りながら、現在のイラン戦争が「危険なパターン」に入りつつあると指摘する。
民主国家は「中規模な戦争」が最も苦手
カプラン氏は、軍事史家ジェームズ・ストークスベリーの議論を引用し、民主国家は次の2種類の戦争には比較的強いと説明する。
・小規模な戦争(専門軍人が中心となる)
・国家総動員型の大戦争
しかしその中間に位置する「中規模戦争」は最も対応が難しいという。
中規模戦争とは、大きな破壊と犠牲を伴うものの、国家全体を動員するほどではない戦争を指す。アフガニスタン戦争やイラク戦争、ベトナム戦争などがその典型例だ。
こうした戦争は長期化しやすく、最終的には政権や政府への信頼を大きく損なう傾向がある。
イラン戦争も同じ道をたどる可能性
カプラン氏によれば、トランプ政権は現在、イランに対して大規模な空軍・海軍戦力を投入しているが、地上部隊はまだ大きく展開していない。
しかし戦争には「エスカレーションの坂道」が存在する。
もしイラン国内で内戦のような状況が生じれば、米国は特殊部隊や軍事顧問団の派遣を迫られる可能性がある。そこから軍事介入が拡大し、中規模戦争へと発展するリスクがあるという。
実際、ベトナム戦争も最初は限定的な関与から始まり、徐々に拡大していった。
誤算は戦争の常
カプラン氏はさらに、戦争の意思決定そのものが本質的に不確実性の高い判断である点を指摘する。
著名な軍事理論家カール・フォン・クラウゼヴィッツは、「戦争における行動の基礎となる事柄の4分の3は霧の中に隠れている」と述べている。
つまり、戦争を始める時点で完全な情報を持つことは不可能であり、後から見れば誤算だった判断も少なくない。
イラク戦争も当初は「必要な戦争」と考えられていたが、結果的には米国にとって大きな負担となったとカプラン氏は指摘する。
中国・台湾や北朝鮮でも同様のリスク
カプラン氏はさらに、こうした「中規模戦争」がイラン以外でも起き得ると警告する。
特に台湾海峡での衝突は、世界の供給網や半導体産業に大きな影響を与えるため、アフガニスタンやイラクよりも経済的影響が大きくなる可能性がある。
また北朝鮮でも、体制崩壊が起きれば内戦状態となり、国際介入が必要になる恐れがあるという。
小さな戦争が拡大する「危険な兆候」
カプラン氏は、戦争が拡大する兆候として次の点を挙げる。
・地政学の議論ばかりで現地事情が軽視される
・国家の「名誉」や感情が軍事行動を後押しする
・戦後の計画が十分に準備されていない
実際、イラク戦争では宗派対立などの国内事情が軽視され、結果的に長期戦争へと発展した。
「中規模戦争」を避けることが大国の条件
論考は最後に、コリン・パウエル元米国務長官の「パウエル・ドクトリン」に言及する。
この原則では、戦争を行うには
・圧倒的戦力
・明確な目標
・出口戦略
・国民の支持
などが必要とされる。
カプラン氏は、この原則が近年軽視されていると指摘したうえで、「中規模戦争を避けることこそが、大国が長く生き残るための条件だ」と結論づけている。
※当サイトに掲載する情報は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品、為替、貴金属等への投資、取引、または売買を勧誘・推奨するものではありません。投資および取引には価格変動等のリスクが伴います。当サイトの情報を利用したことにより生じた損失、損害、トラブル等について、当サイトおよび運営者は一切の責任を負いかねます。最終的な投資判断は、必ず読者ご自身の判断と責任において行ってください。

