米ドル指数(DXY)は金曜日、米最高裁がトランプ大統領の包括的関税措置を違法と判断したことを受けて急落し、97.75を下回る水準まで下落した。あわせて発表された米経済指標の弱さも重なり、ドルは主要通貨に対して軟調な展開となった。

最高裁、IEEPA関税を否定
米最高裁は6対3で、国際緊急経済権限法(IEEPA)は大統領に関税を課す権限を与えていないと判断した。これにより、いわゆる「リベレーション・デー」関税や、カナダ・中国・メキシコに対する25%のIEEPA関税は無効となる。
判決後、ドル指数は約0.25%下落。IEEPA関税の撤廃は構造的なインフレ圧力を和らげる可能性があり、将来的な利下げ余地を広げるとの思惑からドル売りが優勢となった。
なお、ペンシルバニア大学ウォートン校は、約1,750億ドルの関税収入が払い戻し対象となる可能性を指摘しているが、最高裁判断では明示されなかった。
トランプ氏「バックアッププランある」
一方で、トランプ大統領は最高裁判断を受け、「関税にはバックアッププランがある」と表明した。
財務長官のベッセント氏も、通商法301条や232条、122条など別の法的枠組みを活用する可能性を示唆している。ただし、これらはIEEPAに比べて適用範囲が限定的で、発動まで時間を要するとみられている。
市場では今回の判決をある程度織り込んでいたとの見方もあり、ドルの下落は限定的との分析もある。
GDP失速、PCEは予想上振れ
同日発表された米第4四半期GDPは年率1.4%増と、市場予想(3.0%)を大きく下回った。第3四半期の4.4%から急減速している。
一方で、個人消費支出(PCE)価格指数は前年比2.9%、コアPCEは3.0%と予想を上回った。インフレは依然として高止まりしている。
この組み合わせは「スタグフレーション的」な様相を示唆するが、最高裁判断が発表されるまではドルは97.85〜97.90付近で小動きにとどまっていた。
PMI・消費者信頼感も弱含み
さらに、2月のS&PグローバルPMIは製造業・サービス業ともに予想を下回り、総合指数も低下。ミシガン大学消費者信頼感指数も56.6と予想を下回った。
一方で、1年・5年のインフレ期待はやや低下しており、家計部門は「ポスト関税環境」を織り込み始めている可能性がある。
アトランタ連銀総裁は依然タカ派姿勢
アトランタ連銀のボスティック総裁は、インフレは依然高すぎるとして慎重姿勢を維持。2026年の利下げは想定していないと述べた。
ただし、今回の最高裁判断については「影響を評価するのは難しい」とし、払い戻しや企業行動次第で政策見通しが変わる可能性を示唆した。
今後の焦点
市場のポイントは以下の3点に集約される。
- トランプ政権がどの法的枠組みで関税を再構築するか
- 1,750億ドル規模の払い戻し問題
- インフレ鈍化と景気減速のバランス
関税撤廃はドルにとって短期的にはネガティブ材料だが、代替措置の可能性や財政影響を踏まえると、不透明感は依然として高い。
ドル相場は、金融政策と通商政策の二重リスクを抱えながら、方向感を探る展開が続きそうだ。

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