トランプ大統領は4月7日午後8時(米東部時間)の期限直後、Truth Socialで「イランへの爆撃・攻撃を2週間停止する」と発表した。パキスタンのシャリフ首相が仲介し、ホルムズ海峡の完全開放を条件に一時停止が実現した形だ。これを受けてWTI原油は115ドル台から一時100ドルを割り込み、日経平均先物は1,700円急騰した。
「2週間停止」の中身 — 攻撃はゼロではなかった
CNBCが4月7日に報じたところでは、トランプ大統領の「停止」発表の前後にも軍事行動は続いていた。米軍はイランの主要石油輸出拠点であるハルク島の軍事目標を複数攻撃した。ただし、石油輸出ターミナルそのものへの直撃は確認されていない。
アルジャジーラのライブブログによると、イスラエル軍もテヘラン空港3カ所、ペトロケミカル施設、南パルスガス田の発電ユニットを攻撃している。サウジアラビアはドローン18機以上を迎撃し、クウェートの米軍基地では米兵15人が負傷した。
つまり「停止」とは言いつつも、期限当日まで攻撃は激化していた。パキスタンのシャリフ首相が「2週間の延長」をトランプに要請し、最後の瞬間に受け入れられたのが実態だ。イラン側は「外交は前進した」と反応しているが、正式な合意書面には至っていない。
今回の発表は正式な「停戦合意」ではなく、トランプ大統領が一方的に「攻撃を停止する」と宣言したものだ。イランが条件(ホルムズ海峡の完全開放)を満たさなければ、いつでも攻撃を再開できる。逆にイランもこの「停止」を受け入れたわけではなく、独自の10項目の要求(制裁解除・復興支援など)を提示している。
原油は115ドル→100ドル割れへ急落 — ただし「割安」とは言えない
市場の反応は迅速だった。WTI原油は発表直後に115ドル台から103〜107ドル台へ急落し、一時100ドルを割り込む場面もあった。ブレント原油も113ドル台から109ドル前後まで下落した。
しかし、1年前の原油価格は約63ドルだったことを考えると、100ドル台でも依然として前年比+60%近い水準だ。3月末の記事で試算した「家計負担 年間6〜9万円増」の構図は大きく変わっていない。ホルムズ海峡の物理的な封鎖が完全に解除されるまでは、サウジ・UAE・クウェート・カタール・バーレーンで日量750〜910万バレルの生産停止が続いており、供給リスクは残存している。
日経先物1,700円急騰 — 4月8日の東京市場はどう動くか
日本経済新聞によると、4月7日の日経平均終値は53,429円(前日比+15円、ほぼ横ばい)で引けた。期限前の慎重姿勢から午後は上げ幅を縮小していた。しかし引け後の夜間取引で「2週間停止」が報じられると、先物は一気に1,700円急騰して54,040円をつけた。
4月8日の東京市場は大幅高で始まる可能性が高い。米国株先物もS&P500が+1.6%、ナスダック100が+1.8%、ダウ先物が+725ポイントと上昇している。原油安は航空・化学・電力セクターにとっては直接的なコスト減につながり、前日まで売られていた銘柄のリバウンドが期待される。
一方で、前回記事で提示した4つのシナリオのうち「期限再延長」に近い結果となった今回の展開は、根本的な解決ではない。2週間後に交渉が決裂すれば、原油と株式市場は再び急反転するリスクがある。
国連安保理は機能不全 — ロシア・中国が拒否権
CNBCによると、4月7日の期限直前に開かれた国連安全保障理事会では、ホルムズ海峡の即時開放を求める決議案にロシアと中国が拒否権を行使した。国際的な枠組みによる解決が機能しない中、事実上パキスタンの仲介だけが頼みの綱となっている状況だ。
この構図は「2週間の停止」がいかに脆弱な基盤の上に成り立っているかを示している。多国間の合意ではなく、米国とイランの二国間(にパキスタンが仲介するだけの)枠組みでは、どちらか一方の姿勢が変わるだけで崩壊しうる。
イラン側も受け身ではない。CNBCによると、イランは独自の10項目案を提示しており、その中にはホルムズ海峡の航行安全保証だけでなく、経済制裁の全面解除、戦闘被害に対する復興支援、バブ・アル・マンダブ海峡(紅海入口)の安全保証まで含まれている。米国がこれらを受け入れる可能性は低く、交渉は長期化が避けられない。紛争開始から39日目を迎えた現在、サウジ・UAE・クウェート・バーレーンのインフラ被害も深刻化しており、たとえ停戦が実現しても原油生産の回復には数カ月を要するとの見方が市場関係者の間で広がっている。
個人投資家が意識すべき3つのポイント
1. 「2週間の猶予」であって「解決」ではない — 4月21日前後が次の分岐点
今回の停止期間は約2週間。4月21日前後に再び期限が到来する。それまでにホルムズ海峡の開放と正式合意が成立するかが全てを決める。この期間中にポジションの見直し(特にエネルギー関連・為替)を行うのが合理的だ。
2. 原油100ドル割れでも、ガソリン・電気代への波及はすぐには収まらない
原油の国内小売価格(ガソリン・灯油)は数週間のタイムラグで反映される。また、LNGや石炭の契約価格は原油に連動するものが多く、電気代への影響は数カ月単位で続く。原油の急落を「生活費が下がる」と即座に楽観するのは早い。
3. 日経平均の1,700円高は「ショートカバー」の要素が大きい
先物市場での急騰は、地政学リスクを警戒して売りポジションを取っていた投資家が一斉に買い戻す「ショートカバー」が主因だ。これは実需の買いではないため、持続性に疑問がある。急騰に飛び乗るのではなく、4月8日の現物市場の出来高と値動きを確認してから判断するのが賢明だ。
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