原油WTI終値100ドル台 — ブレント月間55%上昇は1988年以来最大、家計負担は年間6〜9万円増

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米国産原油の指標であるWTI先物が3月30日、1バレル=102.88ドルで取引を終えた。終値ベースで100ドル台に乗せたのはイラン紛争開始以来初めてだ。国際指標のブレント原油も112.78ドルまで上昇し、3月の月間上昇率は55%と、1988年のブレント先物取引開始以来最大の記録となった。

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目次

なぜ原油はここまで急騰したのか

話は2月末にさかのぼる。米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始し、中東の緊張が一気に高まった。特に深刻なのは、世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡周辺の供給が途絶したことだ。

CNBCによると、紛争の影響で世界は日量450万〜500万バレルの原油供給を失った。これは世界の供給量の約5%にあたる。この供給の穴が埋まらないまま紛争が5週目に突入し、原油価格は連日上昇を続けている。

因果関係を整理すると、以下のようになる。

  1. イラン紛争でホルムズ海峡付近の原油供給が途絶(日量約500万バレル)
  2. 世界の原油供給量が5%減少 → 需給バランスが一気に崩れる
  3. 供給不安から原油先物に投機資金が流入 → WTI 102ドル、ブレント112ドルに
  4. 原油高がガソリン・電気代・食品価格に波及 → 世界中でインフレ圧力が強まる
📌 キーポイント:ホルムズ海峡とは
ペルシャ湾の出口にあたる幅約50kmの海峡。世界の原油輸送量の約20%がここを通過する。この海峡が封鎖されると、サウジアラビア、イラク、クウェートなどの産油国からの輸出が大幅に制限される。つまり、ホルムズ海峡の安全は世界のエネルギー供給の生命線だ。

ブレント55%上昇は何を意味するのか

ブレント原油の月間55%上昇は、数字だけ見ると実感が湧きにくい。過去と比較すると、その異常さがわかる。

2020年5月にコロナ後の回復局面でWTIが88%上昇した記録があるが、これは一時マイナス価格まで暴落した反動だった。今回は70ドル台から112ドル台への上昇であり、実体経済への影響は比較にならないほど大きい。

CNBCの3月30日報道では、イラン側が米国との交渉を否定したことで、事態の早期収束への期待が後退したと伝えている。市場は長期化シナリオを織り込み始めている。

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日本の家計にどう影響するのか — 年間6〜9万円の負担増試算

原油高が日本の消費者に影響するルートは主に3つある。

第1に、ガソリン価格の上昇だ。日本はエネルギーの9割以上を輸入に頼っており、中東からの原油が大きな割合を占める。原油が100ドルを超えると、レギュラーガソリンは1リットルあたり200円台に近づく可能性がある。

第2に、電気代への波及だ。火力発電の燃料となるLNG(液化天然ガス)や石炭の価格も、原油連動で上昇する傾向がある。電力会社が燃料費調整額を引き上げれば、毎月の電気代が数百円〜千円規模で増加する。

第3に、食品・日用品の値上がりだ。物流コストの上昇が輸送費に転嫁され、スーパーやコンビニの商品価格に波及する。これに円安(ドル円160円台)が加わると、ドル建ての原油価格に為替の上乗せが加わる「二重の値上がり」が発生する。

総務省の家計調査をベースに試算すると、原油100ドル台+円安160円の組み合わせは、一般的な家庭で年間6万〜9万円の負担増に相当する。

原油100ドル突破が家計に届くまでのフロー図

スタグフレーションの影が忍び寄る

原油100ドル台が定着した場合、最も懸念されるのはスタグフレーション(景気停滞と物価上昇の同時進行)だ。原油高は企業のコストを押し上げて景気を冷やす一方で、消費者物価を押し上げてインフレを加速させる。つまり、景気が悪いのに物が高くなるという、最も対処しづらい経済状況に陥る。

米連邦準備理事会(FRB)にとっても難しい局面だ。インフレが再燃すれば利下げはできない。しかし景気が減速すれば利下げで支える必要がある。原油高はFRBの金融政策の選択肢を狭め、「何もできない」状態に追い込む可能性がある。実際、3月のミシガン大学消費者信頼感指数は53.3まで低下し、1年先インフレ期待は2年ぶりの高水準に達している。

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米国株市場への打撃 — VIX30超え、FANG株は弱気相場入り

原油高は株式市場にも波及している。3月30日のS&P500は6,343.72で5週連続の下落となった。VIX(恐怖指数)は一時30を超え、投資家のリスク回避姿勢が鮮明になっている。

日本経済新聞によると、米大型ハイテク株の指標「FANG+」は算出以来初の弱気相場入りとなった。5カ月連続の下落は過去に例がない。エネルギーコストの上昇が企業のIT投資を冷え込ませるとの見方が広がっている。

一方で、原油高の恩恵を受けるエネルギー株やロンドンの資源株は買われており、FTSE100は過去最高値を更新した。市場は「原油高の勝者と敗者」を選別する動きに入っている。

今後の注目点

原油価格が100ドル台を維持するか下落に転じるかは、イラン紛争の行方に大きく依存する。市場関係者が注視しているのは以下の3点だ。

第1に、停戦交渉の進展。3月26日にイラン側が米国との直接交渉を否定しており、アルジャジーラは「事態沈静化への期待が後退した」と報じている。

第2に、OPEC+の増産対応。サウジアラビアなどの産油国が増産に動くかどうかが供給回復の鍵を握る。

第3に、各国の戦略備蓄放出の動き。米国を中心にIEA加盟国が協調して備蓄を放出すれば、一時的に供給不安を和らげる可能性がある。

個人投資家が意識すべき3つのポイント

  1. 生活防衛を優先する。原油高+円安の「二重の値上がり」が家計を圧迫する。ガソリン・電気代・食費の増加分(年間6〜9万円)を念頭に置き、投資に回す余裕資金を無理に捻出しない。
  2. エネルギー関連株とインフレ連動資産に注目する。原油高で恩恵を受けるのはエネルギー株、資源株、インフレ連動債(TIPS)だ。ポートフォリオの一部をインフレヘッジに振り向けることを検討したい。
  3. 「停戦 = 原油急落」のシナリオにも備える。もし停戦が成立すれば原油は急落し、エネルギー株も調整する。逆に、景気敏感株やハイテク株にはリバウンドの余地が生まれる。一方向だけに賭けず、複数シナリオを想定しておく。
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ホッホ博士
マネー比較ラボ編集部
金融市場・世界情勢・仮想通貨・FXに関するニュースや解説記事の作成、金融サービスの比較を行っています。
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