イラン情勢の緊張と原油価格の急騰により、日本株市場は大きく揺れている。日経平均は短期間で大きく上下し、投資家の間では「原油相場と株式市場の異常な連動」が話題になっている。
もっとも、複数の分析を見ると、現在の相場はあくまで地政学ショックによる短期的な反応の側面が強い可能性がある。中長期では、企業業績や政策といった本来のテーマが再び焦点になるとの見方も出ている。
原油と日経平均が「鏡写し」状態に
野村證券のレポートは、3月初旬以降の日本株について「原油価格の鏡写しのような動き」になっていると指摘する。
具体的には、
- 原油が10ドル上昇すると日経平均先物が約1000円下落
という強い相関が観測されているという。
この関係から試算すると、WTI原油価格が87.5ドルの場合、日経平均の妥当水準は約5万4500円前後になる計算だという。
ただし同レポートでは、原油高が企業業績に与える影響から見ると、日本株はやや売られ過ぎの状態とも分析されている。
WTIが65ドルから88ドルへ上昇する(約30%の原油高)場合、日本企業のEPS(1株利益)は3.0〜3.75%程度下振れする可能性があるが、それを踏まえた日経平均の妥当水準は5万5000〜5万6000円程度と試算されている。
地政学リスクが日経平均を左右
今回の市場変動の直接的なきっかけとなったのは、イラン情勢の急激な悪化だ。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、ホルムズ海峡の緊張が金融市場を動揺させているとレポートで指摘する。
ホルムズ海峡は世界の原油輸送の約2割が通過する重要ルートであり、封鎖や攻撃のリスクが高まればエネルギー市場だけでなく金融市場にも大きな影響が出る。
実際、3月9日には
- WTI原油先物が120ドル近くまで上昇
- 日経平均が一時4200円超下落
するなど、市場は大きく動揺した。
日本株は「3つのシナリオ」で変わる
ニッセイ基礎研究所のレポートでは、中東情勢の今後を3つのシナリオに分け、日本株の行方を分析している。
①情勢が短期で沈静化する場合
最も現実的とされるシナリオでは、
- 原油価格:70〜90ドル
- 日本企業:2桁増益維持
と見込まれる。
この場合、日経平均は
- 5万5000円程度まで回復
- 条件次第で5万8000円も視野
とされる。
②ホルムズ海峡の混乱が長期化
次に想定されるのが、航行不安が数か月続くケースだ。
この場合
- 原油:120〜150ドル
- 景気減速懸念
が強まり、株式市場は調整圧力を受ける。
日本株の落ち着きどころは
4万6000〜5万3000円
と試算されている。
特に影響を受けやすい業種は
- 航空
- 運輸
- 自動車
- 化学
などエネルギーコストの影響を受けやすい企業だ。
③中東全面戦争
最悪のシナリオでは
- 原油150〜200ドル
- 世界株式急落
という展開も想定される。
この場合
- 日経平均は25〜30%下落
- 4万円割れ
も現実味を帯びるとされる。
もっとも、同レポートは全面戦争の可能性は「極めて低い」とみている。
押し目買いの動きも
市場が大きく揺れる中でも、日本株への資金流入は続いている。
野村証券によると、3月6日から11日にかけて国内株式投信には
1日約400億円ペース
で資金が流入した。
年率換算では約10兆円規模に相当し、投資家の押し目買い意欲の強さを示している。
原油連動の相場は一時的との見方
野村証券は、現在の日本株について「原油と株価の過度な連動は非日常的」と指摘する。
WTI先物市場では、将来の価格が現在より低いバックワーデーション(逆ざや)が続いており、市場は中東情勢がいずれ沈静化するとの見方を織り込んでいる。
そのため、現在の原油主導の相場は長く続かず、今後は
- 企業業績
- 成長政策
- 世界経済
といった本来の株式市場のテーマに焦点が戻る可能性が高いとされる。
次の日本株のテーマは「成長」
地政学ショックが落ち着けば、投資家の関心は次のテーマへ移る可能性がある。
野村証券は
- 日本の成長戦略
- 中国・欧州の政策動向
など、中長期の政策テーマが徐々に注目される可能性を指摘する。
中東情勢という外部ショックで揺れる日本株市場だが、長期的には企業業績の拡大基調が崩れていない限り、次の上昇局面を見据えた動きも徐々に強まる可能性がありそうだ。
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