「解放の日」関税から1年 — 最高裁が違法判断、1,660億ドル還付の行方と日本への影響

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「解放の日」から1年 — 最高裁が違法判断、1,660億ドルの還付はどうなるのか

2025年4月2日、トランプ大統領は「アメリカ産業が生まれ変わる日だ」と宣言し、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく大規模な関税を発動した。あれから丸1年。関税は最高裁で違法と判断され、約1,660億ドル(約26兆円)もの還付手続きが始まろうとしている。この1年で米国経済に何が起き、日本にどう影響しているのかを整理する。

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最高裁が6対3で「違法」と判断した理由

2026年2月20日、米連邦最高裁は「Learning Resources, Inc. v. Trump」事件で、IEEPAに基づく関税は違法であるとの判決を下した。CNBCによると、ロバーツ首席判事が多数意見を執筆し、ゴーサッチ判事、バレット判事ら6名が賛同した。判決の核心は「IEEPAは大統領に関税を課す権限を与えていない」という点だ。

つまり、関税は本来議会(連邦議会)が決めるものであり、大統領が「緊急事態」を理由に独断で課すことは憲法上認められない、という判断である。トランプ大統領は判決後、バレット判事とゴーサッチ判事を名指しで批判したが、判決自体は覆っていない。

📌 キーポイント:IEEPAとは
国際緊急経済権限法(IEEPA)は1977年に成立した法律で、大統領が「国家緊急事態」を宣言した際に経済制裁を発動できる権限を定めている。本来は外国資産の凍結や送金制限を想定したもので、関税を課すための法律ではなかった。トランプ政権はこの法律を拡大解釈して関税に利用したが、最高裁はその解釈を否定した。

1,660億ドルの還付 — 手続きは遅れている

最高裁判決を受け、米税関・国境取締局(CBP)は約33万の輸入業者から徴収した約1,660億ドルの関税を返還する必要が生じた。対象は5,300万件を超える通関記録に及ぶ。

クリスチャン・サイエンス・モニターが報じたところでは、CBPの4段階の還付プロセスは進捗率40〜80%と、ステップによってばらつきがある。還付開始は4月下旬を目指しているが、システム改修が必要なため遅延する可能性もある。返還額には利息も加算されるため、最終的な政府負担はさらに膨らむ見通しだ。

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この1年で米国経済はどう変わったか

トランプ大統領は「雇用と工場が戻ってくる」と約束した。しかし現実は異なる。クリスチャン・サイエンス・モニターによると、2025年3月(関税発動の前月)から2026年2月までに製造業の雇用は9万3,000人減少した。「アメリカ産業の再生」どころか、製造業の雇用は縮小している。

消費者への影響も大きい。関税による輸入品の値上がりで、平均的な家庭は年間最大940ドル(約15万円)の追加負担を強いられている。関税発動前の平均関税率は約3%だったが、最高裁判決前には約14%まで跳ね上がった。判決後も約11%と、依然として高い水準にある。歴史的に見れば、直近50年間で最も急激な関税率の上昇であり、米国経済にとって「劇的なショック」だったとクリスチャン・サイエンス・モニターは評価している。

一方で建設業では3万6,000人の雇用増が記録されるなど、セクターによって明暗が分かれた。関税が「国内回帰」を促す効果は限定的だったものの、鉄鋼やアルミの国内需要増加が建設関連の雇用を支えた面もある。

なぜ最高裁で違法とされた後も関税率が高いのか。それはトランプ政権がIEEPA関税の代わりに、1974年通商法第122条に基づく10%の暫定関税を150日間の期限付きで導入したためだ。さらに4月2日には鉄鋼・アルミニウム・銅に対する新たな関税を発表した。ホワイトハウスのファクトシートによると、鉄鋼・アルミ・銅の純製品には50%、それらを主要素材とする加工品には25%、米国産材料のみを使用した製品には10%の優遇税率が適用される。

トランプ関税1年の経済影響

日本への影響 — 自動車と鉄鋼が直撃

日本にとって最大の懸念は自動車関税だ。nippon.comによると、日本車への関税は当初の25%から日米交渉を経て15%に引き下げられたが、トヨタ自動車は2026年3月期の関税関連コストを91億ドル(約1.4兆円)と見積もっている。

さらに4月2日に発表された鉄鋼50%関税は、日本の鉄鋼メーカーにも打撃を与える。日本製鉄の米国事業や、日本から輸出される特殊鋼にも高率の関税がかかることになる。

これは日本の消費者にも波及する。自動車メーカーが関税コストを販売価格に転嫁すれば、日本国内で販売される車の価格にも間接的に影響する可能性がある。また、米国の鉄鋼・アルミ関税は世界的な金属価格の上昇要因となり、建設コストや家電製品の価格にも影響しうる。現在ドル円が159円台で推移していることを考えると、関税による原材料コスト上昇と円安のダブルパンチで、日本の輸入物価はさらに押し上げられる構図だ。

今後の注目点

この1年間で関税政策は50回以上変更された。タックス・ファンデーションの分析では、関税は向こう10年で8,000億ドルの税収をもたらすと試算されているが、最高裁判決で還付が発生し、経済成長への悪影響も考慮すると、実質的な財政効果は不透明だ。

投資家にとって重要なのは、第122条の暫定関税が150日間の期限付きである点だ。期限切れ後にトランプ政権がどのような新たな関税を打ち出すのか、あるいは議会がどう動くのかが、今夏の最大の焦点となる。

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個人投資家が意識すべき3つのポイント

1. 関税の不確実性はまだ続く
最高裁判決で一部の関税は撤廃されたが、鉄鋼50%関税や暫定10%関税は有効。「関税リスクは終わった」と考えるのは早い。米国株や日本の輸出関連株(自動車、機械、鉄鋼)への投資では、関税政策の急変リスクを常に意識する必要がある。

2. 1,660億ドルの還付は企業業績の押し上げ要因になりうる
還付が始まれば、過去1年間に関税を負担してきた輸入業者の利益が改善する。特に小売業や製造業で関税コストを吸収してきた企業にとっては、一時的な業績改善要因となる可能性がある。

3. 円安+関税=輸入物価の二重パンチに注意
ドル円が159円台で推移する中、米国の関税による原材料コスト上昇と円安が重なると、日本の輸入物価はさらに上昇する。食料品や日用品の値上がりが続く中、家計の防衛策として分散投資や外貨建て資産の保有を検討する価値がある。

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マネー比較ラボ編集部
金融市場・世界情勢・仮想通貨・FXに関するニュースや解説記事の作成、金融サービスの比較を行っています。
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