日本が史上最大の石油備蓄放出に踏み切る 5,100万バレル放出でガソリン価格はどうなるか

当ページのリンクには広告が含まれています。

日本政府は3月26日、国内11カ所の石油備蓄基地(菊間、苫小牧東部等)から石油の国家備蓄放出を開始した。放出量は約5,100万バレルで、国内消費の約1カ月分に相当する。日本の石油備蓄放出としては史上最大の規模だ。

松井証券
目次

なぜ史上最大の放出が必要になったのか

原因はホルムズ海峡の事実上の封鎖だ。ホルムズ海峡はペルシャ湾から外洋に出る唯一の出口で、中東産原油の輸出ルートとして不可欠な水路である。イラン戦争の影響でこの海峡が事実上の封鎖状態に陥り、世界の石油供給が大幅に減少した。

日本にとって打撃は特に大きい。日本は原油の約9割を中東に依存しているからだ。つまり、ホルムズ海峡が使えなくなると、日本に届く原油のほとんどが止まる。この供給不足を補うために、政府は過去に例のない規模の備蓄放出に踏み切った。

キーポイント:石油備蓄(SPR)とは
戦争や自然災害で石油の輸入が途絶えた場合に備えて、国が地下タンクや洋上基地に原油を蓄えておく制度。つまり「国のエネルギー貯金」だ。日本では国が保有する「国家備蓄」と、石油会社が保有する「民間備蓄」、さらに産油国と共同で保有する「産油国共同備蓄」の3種類がある。今回は国家備蓄に加え、産油国共同備蓄も史上初めて放出された。

放出の具体的な内容

今回の放出は以下の規模で実施される。

項目 内容
放出量 約5,100万バレル(国内消費約1カ月分)
売却額 5,400億円
契約先 ENEOS、出光興産、コスモ石油、太陽石油(元売り4社と随意契約)
放出拠点 国内11カ所の石油備蓄基地(菊間、苫小牧東部等)
産油国共同備蓄 5日分を史上初めて放出

売却先は元売り4社との随意契約だ。随意契約とは、入札を行わずに政府が直接相手を選んで契約する方式で、緊急時に迅速な対応が可能になる。つまり、今回は「スピード優先」で石油を市場に流すことを重視した判断だ。

原油市場の動き ― 停戦期待で急落

原油価格は足元で大幅に下落した。ブレント原油は99.16ドル/バレル(前日比-5.10%)、WTI原油は88.41ドル(同-4.27%)だ。下落の直接的な原因は、米国がイランに15項目の停戦枠組み案を送付したことだ。停戦交渉への期待が原油市場に広がり、売りが優勢になった。

ただし、イラン外務省は停戦交渉の存在自体を否定している。停戦が実現するかどうかは不透明であり、原油価格が今後さらに下落するとは限らない。

株・投資信託ならネット証券のマネックス

生活への影響 ― ガソリン価格と家計

ガソリン店頭価格は177.7円/リットルで、6週ぶりに下落した。これは政府補助金の再開による効果だ。備蓄放出と補助金の再開という2つの施策が、ガソリン価格の上昇を一時的に抑えている。

食料品や日用品の価格にも影響がある。石油は物流の燃料であり、プラスチックや化学肥料の原料でもある。原油価格が高止まりすれば、輸送費や原材料費を通じて食品・日用品の値上がりにつながる。日本は原油の約9割を輸入に頼っている以上、原油価格の動向は家計に直結する。

石油備蓄放出の全体像フロー図

今後の注目点

第2弾の備蓄放出があるかどうかが最大の焦点だ。石油連盟会長は「イラン戦争が長期化すれば第2弾の放出も必要になる可能性がある」と述べている。今回の放出後も民間備蓄と合わせて約50日分を確保しているが、戦争が長引けばこの「貯金」も減り続ける。

米国とイランの停戦交渉の行方も重要だ。米国はイランに15項目の停戦枠組み案を送付した。この枠組みが受け入れられればホルムズ海峡の正常化が見込め、原油価格は大幅に下落する。ただしイラン外務省は停戦交渉の存在を否定しており、楽観はできない。

キーポイント:産油国共同備蓄とは
日本が中東の産油国(サウジアラビア、UAE等)と共同で日本国内に保管している石油備蓄のこと。産油国は日本国内に原油を貯蔵し、緊急時には日本が優先的に使用できる取り決めだ。つまり「産油国が日本に預けている原油を、緊急時に日本が使っていい」という仕組み。今回、この共同備蓄が史上初めて放出された。

個人投資家が意識すべき3つのポイント

1. 原油価格の二極シナリオを想定しておく。停戦が実現すれば原油は大幅に下落し、エネルギー関連株は下押し圧力を受ける。逆に停戦が不成立なら原油は100ドル超に戻り、石油元売り各社(ENEOS、出光興産、コスモ石油)やエネルギーETFが恩恵を受ける。どちらのシナリオにも対応できるよう、ポジションを一方に偏らせすぎないことが重要だ。

2. 備蓄放出の「残り日数」に注意する。現在、民間備蓄と合わせて約50日分が残っている。石油連盟会長が第2弾放出の可能性に言及している以上、備蓄の減少ペースは市場心理に直結する。残り日数が減れば「日本は原油を確保できなくなるのでは」という不安が広がり、エネルギー関連銘柄だけでなく円相場にも影響する。

3. ガソリン補助金と物価の関係を把握する。現在のガソリン価格177.7円/リットルには政府補助金が含まれている。補助金が縮小・廃止されれば価格は上昇し、物流コストを通じて食品・日用品の値上がりに波及する。インフレ圧力の高まりは日銀の金融政策にも影響するため、ガソリン補助金の動向は株式・為替の両方に関係する。

ソース

日本経済新聞「石油国家備蓄、26日から11カ所で順次放出」(2026年3月25日)
Newsweek Japan「政府、石油の国家備蓄放出26日に開始」(2026年3月25日)
Bloomberg日本語版「日本は第2弾の石油備蓄放出必要に」(2026年3月23日)
CNBC「Oil price: WTI, Brent fall as Trump signals Iran talks」(2026年3月25日)

moomoo証券【WEB】

※当サイトに掲載する情報は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品、為替、貴金属等への投資、取引、または売買を勧誘・推奨するものではありません。投資および取引には価格変動等のリスクが伴います。当サイトの情報を利用したことにより生じた損失、損害、トラブル等について、当サイトおよび運営者は一切の責任を負いかねます。最終的な投資判断は、必ず読者ご自身の判断と責任において行ってください。

ホッホ博士
マネー比較ラボ編集部
金融市場・世界情勢・仮想通貨・FXに関するニュースや解説記事の作成、金融サービスの比較を行っています。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次