米国とイスラエルによるイランへの大規模攻撃は、地域秩序だけでなく世界経済と金融市場に重大な影響を与える可能性がある。INGは最新レポートで、今回の軍事行動が「短期終結型」か「長期化型」かによって市場の行方は決定的に分かれると指摘した。
■ 体制転換が目標に
今回の攻撃ではイランの軍事・核・指導部拠点が標的となり、最高指導者ハメネイ師死亡も報じられている。INGは、これは単なる抑止行動ではなく「体制転換」を明確な目標とする重大な転換点だと分析する。
歴史的に、中東での体制崩壊は安定的移行よりも内戦・分裂・過激化を招くケースが多い。市場はすでにこの不確実性を織り込み始めている。
■ 2つのメインシナリオ
INGが示す金融市場の分岐点は明快だ。
それは数日で終わるか、それとも中東全体を巻き込む長期戦になるかだ。
シナリオ1:4〜7日で沈静化
- 軍事目標の早期消耗
- 事実上の停戦
- ホルムズ海峡は限定的混乱
- 原油は一時急騰後に沈静化
この場合、市場への影響は「戦争プレミアム」の一時的上乗せにとどまる。グローバルなマクロ経済への長期的影響は限定的となる可能性が高い。
シナリオ2:長期化・中東の全面不安定化
- イランが非対称経済戦を拡大
- タンカー航行妨害
- ホルムズ海峡混乱
- 紅海ルート再遮断
ホルムズ海峡は日量約2000万バレルの原油と、世界のLNG貿易の22%を担う戦略的要衝だ。部分的な封鎖でも歴史的供給ショックとなり得る。
この場合:
- 原油は100〜140ドルへ
- 欧州天然ガス(TTF)は80〜100ユーロ/MWhへ
- 株式市場は本格調整
- 安全資産(米国債・金)へ資金逃避
- 中央銀行は深刻な政策ジレンマ
となる可能性がある。
■ 「最悪のタイミング」での供給ショック
INGは、今回の戦争は「最悪のタイミング」と表現する。
- トランプ政権の関税政策
- サプライチェーン分断の継続
- コロナ・ウクライナ戦争後の不安定な貿易体制
ここにエネルギー供給ショックが重なれば、世界貿易に大きな下押し圧力がかかる。
■ 地域別インパクト
🇺🇸 米国
- ガソリン価格上昇
- 生活費圧迫
- FRBは利下げ困難化
一方で米国はエネルギー生産国でもあり、シェール産業は恩恵を受ける。しかし政治的には説明困難な構図に陥る恐れがある。
🇪🇺 ユーロ圏(最も脆弱)
- 原油・LNG輸入依存
- 成長回復途上での二重ショック
- ECBは「インフレ再燃 vs 成長減速」のジレンマ
INGは、14%の原油上昇でインフレ+0.5%、GDP成長−0.1%と試算する。
🌏 日本・アジアへの影響:依存度がリスクを増幅
- 中東原油依存度が高い
- 10%の原油上昇でCPI+0.2%
- 経常収支悪化
アジアは中東原油への依存度が高い。日本とフィリピンは約90%、中国38%、インド46%を中東に依存している。供給遮断が起きれば製造業に波及する。
原油が10%上昇すると、アジアではCPIが約0.2%押し上げられる可能性がある。また、貿易収支も40〜60bp悪化する可能性がある。
INGによれば、原油高が一過性なら「耐えられる」が、持続すると各国中銀を悩ませることになる。INGは、ベースケースでは2026年にかけてインフレが上がっても多くの国で目標範囲内と見ていたが、価格ショックが続けば目標を上回り、引き締め圧力が強まる可能性を指摘する。そうなれば、景気が悪化するにもかかわらず、利下げをしにくい、もしくは引き締めを迫られる状況に陥ってしまう。
エネルギーの価格上昇は第一波だが、長期化シナリオでは第二波として「物流の目詰まり」が効いてくる。INGは、保険が切られ、航路のプレミアムが上がり、迂回や通行停止が発生し得る点を挙げる。さらに紅海でのフーシ派攻撃が再活性化すれば、欧亜航路の代替ルートも細る。日本企業にとっては、燃料費だけでなく、部材・製品輸送の遅延やコスト上昇が利益率を圧迫し、製造計画の不確実性を上げることになる。
■ 為替市場:2022年再来か
INGは、2022年ロシア侵攻時の再現リスクを指摘する。
- 原油高 → 米ドル上昇
- ユーロ・円は下落圧力
- EM通貨はキャリートレード巻き戻し
当時、ドルは半年で10%超上昇した。
■ 2022年との比較:より大きなリスク
ホルムズ封鎖で失われ得る供給は世界供給の15〜20%。ロシア侵攻時にリスクに晒されたのは約7〜8%だった。それでもブレントは一時140ドル近辺まで急騰した。
OECD在庫は現在約2億バレル多いものの、2週間の全面封鎖で緩衝材は消える可能性がある。
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