モルガン・スタンレーが公開したインタビューで、著名投資家スタン・ドラッケンミラー氏は、一般に信じられている投資の常識に対して、かなり踏み込んだ見解を示した。
とりわけ印象的なのは、「逆張り」「テクニカル分析」「AI投資」という3つのテーマに対する率直な発言である。
いずれも市場参加者にとって馴染み深い概念だが、同氏はそれらをかなり現実的な目線で切り捨てている。
「逆張りは過大評価」──群衆は80%正しい
ドラッケンミラー氏は、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドで辣腕を振るい、1992年のボンド危機の立役者の1人でもある。1981年から2010年までデュケイン・キャピタルを率い、年率約30%という驚異的なリターンを維持しながら一度も年間損失を出さなかったと知られる。
ドラッケンミラー氏は、逆張り投資について「逆張りは過大評価されている」と述べる。
この発言は直感に反するが、背景にあるのはソロスの有名な考え方だ。
「群衆は80%の確率で正しい」
つまり問題は、「多数派に逆らうこと」ではない。
むしろ危険なのは、残り20%の場面で間違った側に立つことだ。
同氏は、投資判断において重要なのはポジションの方向性ではなく、
- 確信の強さ
- ポジションサイズ
であると強調する。
「正しいか間違っているかではない。正しいときにどれだけ稼ぎ、間違ったときにどれだけ失うかだ」
逆張りか順張りかという二元論は、本質ではないということだ。
「NVIDIAの綴りも知らなかった」AI投資のリアル
一方で、近年のAIブームについての話は非常に示唆的だ。
ドラッケンミラー氏は、AIの本質を完全に理解していたわけではないと認めている。
「正直に言って、内容の多くは理解できていなかった」
それでも同氏は、パートナーの判断を信じてエヌビディア株に投資した。
さらに、ChatGPTの登場を見て確信を強め、ポジションを積み増したという。
ここで重要なのは、
- 完全な理解は不要
- 重要なのは「信頼できる人」と「変化の方向性」
という点だ。
実際、この投資は大きな成功となったが、同氏は途中で利確し、その後の上昇を取り逃している。
このエピソードは、どれほど経験豊富な投資家であっても、「成功を続けることの難しさ」から逃れられないことを示している。
テクニカル分析は「効きすぎて死んだ」
さらに同氏は、長年使われてきた投資手法にも厳しい評価を下している。
「テクニカル分析は、かつての20%程度しか機能していない」
理由はシンプルだ。みんなが使うようになったからである。
かつては一部の投資家だけが使っていたため優位性があったが、現在は市場参加者の多くが同じ指標を見ている。
その結果、
- チャートパターン
- モメンタム
- ニュースと価格の乖離
といったシグナルは、すでに織り込まれてしまう。
「優位性は、共有された瞬間に消える」
この指摘は、AI時代の投資にもそのまま当てはまる。
投資は「知識量」では決まらない
これらの発言を通じて浮かび上がるのは、ドラッケンミラー氏の一貫したスタンスだ。
同氏は、自身の強みについてこう語る。
「私の強みはIQではない。トリガーを引く力だ」
- 情報を理解する力よりも
- 決断する力
- ポジションを持つ勇気
が重要だという認識だ。
また、同氏は自らを「臆病になった」とも認めており、経験を積んでもなお、投資は心理との戦いであることがうかがえる。
変化の時代に求められる視点
今回の発言は、特定の市場予測ではなく、より普遍的な示唆を含んでいる。
- 逆張りにこだわる必要はない
- 手法は永遠ではない
- 完全な理解がなくても投資はできる
そして何より重要なのは、
「変化をどう捉え、どう賭けるか」
という点だ。
市場環境が大きく変化する局面では、過去の成功パターンに固執すること自体がリスクになり得る。
ドラッケンミラー氏の発言は、その現実を端的に示している。
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