米国とイスラエルによるイラン攻撃が2月28日に始まって以降、世界の株式市場や為替市場は大きく揺れている。しかし、この混乱の中で意外な強さを見せている資産がある。ビットコイン(BTC)だ。イラン戦争の開始以降、ビットコインはS&P 500、ナスダック、さらにはゴールドすらも上回るリターンを記録している。「デジタル・ゴールド」としてのビットコインの実力と、ETFを通じた機関投資家マネーの動向を詳しく見ていこう。
| 資産 | 現在値 | イラン戦争後の動き |
|---|---|---|
| ビットコイン(BTC) | 73,300ドル付近 | 株式・ゴールドを上回るリターン |
| S&P 500 | 6,672 | 週間 −0.61%、6,770サポート割れ |
| 日経平均 | 53,819円 | 前日比 −633円(−1.16%) |
| ゴールド(XAU/USD) | 5,000ドル台 | 上昇もBTCには劣後 |
| ドルインデックス(DXY) | 100超 | ドル高が進行中 |
イラン戦争後、ビットコインが株式を圧倒するパフォーマンス
CNBCは3月14日、ビットコインがイラン戦争開始以降、S&P 500、ナスダック、ゴールドをアウトパフォームしていると報じた。
具体的な数字を見ると、3月13日にはBTCが72,000ドルを突破した。ドル高(ドルインデックスが100超)という通常であればリスク資産に逆風の環境にもかかわらず、BTCはナスダック100先物やS&P 500先物を上回る上昇率を示したとCoinDeskは伝えている。翌日には73,300ドル付近まで上昇し、1カ月ぶりの高値圏に接近した。
一方で、S&P 500は3月13日に重要サポートの6,770を割り込んで6,672で引け、日経平均も3月16日時点で53,819円(前日比−633円)と軟調が続いている。株式が売られる中でビットコインが買われるという、従来の相関関係とは異なる動きが注目を集めている。
ただし、強気一辺倒ではない。BTCは73,000〜74,000ドルのレジスタンスゾーンで過去2週間に4回拒否されており、このレベルを明確に突破できるかが短期的な焦点となっている。CoinDeskによると、3月14日にはトランプ大統領のカーグ島石油施設攻撃示唆を受けて71,000ドル台に一時後退する場面もあった。
ETFに13億ドル流入 — BlackRockが牽引する機関投資家マネー
ビットコインの堅調さを下支えしているのが、ETF(上場投資信託)を通じた機関投資家の資金流入だ。米国のスポットBTC ETFには3月だけで約13億ドル(約2,070億円)の純流入があり、2025年10月以来初の月間プラスとなる見通しだ。
| ETF関連指標 | データ | 備考 |
|---|---|---|
| 3月のBTC ETF純流入額 | 約13億ドル(約2,070億円) | 2025年10月以来の月間プラス |
| IBIT(BlackRock)運用資産 | 550億ドル超 | BTC ETF最大手 |
| IBIT 3月4日の単日流入 | 3億670万ドル | 全BTC ETF流入の66%を占有 |
| BlackRock純購入BTC(2/24〜) | 21,814 BTC | 時価約15.5億ドル(約2,480億円) |
| 3月2日の大規模流入 | 5.21億ドル | 5週間の流出から流入に転換 |
とりわけ存在感を示しているのが、ブラックロック(BlackRock)のiShares Bitcoin Trust(IBIT)だ。Investing.comによると、3月4日にはIBIT単独で3億670万ドルの資金が流入した。HedgeCoが報じたところでは、2月24日以降にブラックロックが純購入したBTCは21,814 BTCに達し、機関投資家が「戦争下でもビットコインを買い増す」姿勢を示している。

BlackRockがステーキング付きイーサリアムETFをローンチ
機関投資家の暗号資産へのアクセス拡大という文脈で、もう一つ注目すべきニュースがある。FinTech Weeklyによると、ブラックロックは3月13日にステーキング機能を備えた新しいイーサリアムETF「ETHB」をナスダックに上場させた。
| 項目 | IBIT(ビットコインETF) | ETHB(イーサリアムETF) |
|---|---|---|
| 対象資産 | ビットコイン(BTC) | イーサリアム(ETH) |
| 上場市場 | ナスダック | ナスダック |
| 運用資産 | 550億ドル超 | 上場直後(拡大中) |
| ステーキング報酬 | なし | あり(ETH配当に相当) |
| 特徴 | BTC ETF最大手 | ステーキング機能付きで画期的 |
従来の暗号資産ETFは原資産の価格変動から利益を得る仕組みだったが、ETHBはステーキング報酬も投資家に還元する点で画期的だ。イーサリアムのステーキングとは、保有するETHをブロックチェーンのネットワーク維持に提供することで報酬を受け取る仕組みであり、株式の配当に近い概念と言える。
ブラックロックのクリプト関連ETP(上場取引型金融商品)全体の運用資産は1,300億ドルを超えた。IBITに続くETHBの投入は、同社が暗号資産を「一過性のブーム」ではなく、長期的な資産クラスとして位置づけていることを示す動きだ。
来週のFOMCがBTCの次の方向性を決める
3月17〜18日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)は、ビットコインにとっても重要なイベントだ。CME FedWatchによると、金利据え置き(3.50〜3.75%)の確率は95%以上と圧倒的だが、同時に発表される「ドットプロット」(各FOMC委員の金利見通し)が焦点となる。
| FOMCシナリオ | ドットプロットの変化 | BTCへの影響 |
|---|---|---|
| 利下げ2回に増加 | 景気減速重視、原油高を一時的と判断 | 追い風 — 80,000ドルも視野 |
| 利下げ1回で現状維持 | 中央値ドット変更なし | 中立 — 73,000ドル前後で推移 |
| 利下げゼロ or 利上げ示唆 | インフレ再燃を深刻視 | 逆風 — 急落リスク、65,000ドル台も |
現在の中央値ドットは「2026年中に1回の25bp利下げ」を示している。これが2回に増えれば、リスク資産にとってはポジティブであり、BTCにも追い風となる。逆に利下げゼロ、あるいは利上げの可能性が示唆されれば、株式・暗号資産ともに急落するリスクがある。
イラン戦争後の原油高がインフレ見通しに与える影響を、FRBがどう評価するかが試される。パウエル議長の記者会見で「スタグフレーション」という言葉が使われるかどうかにも市場は敏感に反応するだろう。
個人投資家が意識すべきポイント
ビットコインの「有事のヘッジ」としての役割は、今回のイラン戦争で一定の裏付けを得た。しかし、これが恒常的な特性なのか、短期的な現象なのかは慎重に見極める必要がある。2022年のウクライナ侵攻時にはBTCは株式と同様に下落した過去もあり、「常に安全資産」とは言い切れない。
ETFを通じたBTC投資のハードルは年々下がっている。ブラックロックのIBITをはじめとする米国上場のスポットBTC ETFは、暗号資産取引所の口座開設やウォレット管理が不要で、証券口座があればアクセスできる。ただし、日本からの投資には海外証券口座が必要な場合がある点には注意したい。
73,000〜74,000ドルのレジスタンスをブレイクした場合、次の目標は80,000ドルとの見方が多い。一方で、FOMCの結果次第で急落するリスクもあるため、レバレッジを控えめにしつつ、複数シナリオに対応できるポジション管理が重要だ。中長期的には、機関投資家のETF経由での参入拡大という構造的な追い風は続いており、ビットコインの市場での位置づけは着実に進化している。

