損保3社が同日4,590億円の自社株買いを発表——東京海上2,000億円・MS&AD1,900億円・SOMPO690億円、政策保有株売却が共通原資

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大手損保3社が5月20日の取引終了後、相次いで自社株買いの実施を発表した。東京海上ホールディングス(8766)が2,000億円、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725)が1,900億円、SOMPOホールディングス(8630)が690億円。1日に同業3社が積み増した買付け枠は合計4,590億円に達する。共通する原資は、いずれも政策保有株(他社との取引関係を維持するために保有してきた持ち合い株)の売却益だ。

目次

3社が同日に発表した自社株買いの中身

東京海上HDは発行済株式の6.9%にあたる1億3,000万株、上限2,000億円の取得枠を決議した。取得期間は5月21日から12月23日まで。2026年度通期では4,000億円規模の自社株買いを実施する方針も同時に示した。

MS&ADは発行済株式の6.5%にあたる9,500万株、上限1,900億円。取得期間は5月21日から11月18日。2026年度を通じた予定総額は2,700億円となる。SOMPOは発行済株式の1.90%にあたる1,700万株、上限690億円。取得期間は6月2日から11月18日まで。

3社いずれも、5月20日の15時から16時台にかけて適時開示で発表しており、損保セクターが横並びで還元姿勢を強めた格好になった。

損保3社 自社株買いと業績見通し

共通の原資は政策保有株のゼロ化

3社が同じタイミングで還元を強められる背景には、政策保有株の売却が共通項として横たわっている。SOMPOは2031年3月末までに政策保有株の残高をゼロ化する目標を掲げ、売却益(税引後)の50%を原則として配当や自社株買いの形で株主に戻す方針を明確にしている。東京海上HDとMS&ADも同様の方向で、保有先との関係解消を進めながら、その売却益を還元に振り向ける構造ができ上がってきた。

キーポイント:政策保有株とは
取引先との関係維持のために、損保各社が長年抱えてきた株式のこと。事業上の見返り(保険契約の獲得など)を期待して保有してきたが、企業統治改革の流れで「資本効率を歪める」との批判が強まり、各社が縮減・ゼロ化に動いている。売却で得たキャッシュは事業投資、自社株買い、配当のいずれかに回る。

Bloombergによれば、今期(2026年度)の政策保有株売却ペースは前年から約3割減る見込みで、放出のスピードは緩む。それでも累計の還元規模は3社合計で兆円単位に積み上がるとされ、株主還元の柱としては当面継続することになる。

2027年3月期の業績見通しは三社三様

同じセクター・同じ日に株主還元を強化した3社だが、2027年3月期の純利益見通しは方向が分かれた。

東京海上HDは前期比56.2%増の8,300億円を計画する。2026年3月期に発生した債券含み損処理(海外子会社で保有していた低利回り債券を売却した損失)の反動が大きく、生保事業の改善と海外買収効果が増益を押し上げる。配当も前期比27円増の245円(年間)に引き上げる方針で、6期連続の増配となる。

MS&ADは2027年3月期の純利益を4,250億円と予想し、年間配当は前期比10円増の170円。14期連続の増配が視野に入った。配当性向は58%に上昇する。

SOMPOは逆に、純利益が前期比23.4%減の4,900億円にとどまる見通しを示した。減益見通しにもかかわらず年間配当は50円増の200円とし、13期連続の増配を維持する。減益局面でも還元水準を引き上げる強い意思を見せた格好になった。

株価と個人投資家への意味

1日に4,590億円規模の自社株買いが同業3社から出てくる事象は珍しい。短期的には3銘柄ともに需給面の追い風が期待できる。発行済株式の6.5〜6.9%を市場から買い戻す東京海上HDとMS&ADは、特に1株当たり利益(EPS)の押し上げ効果が大きい。

長期投資の視点では、政策保有株という非事業性資産が現金化されて株主に戻ってくる流れが続くかどうかが鍵になる。今期は売却ペースが3割減ると見られるものの、ゼロ化目標を掲げる以上、残高がある限り還元原資は出続ける構図だ。配当利回りでも3社揃って3%台を確保しており、配当狙いの長期保有先としての位置づけも厚みを増している。

一方で、SOMPOのように本業利益が減る局面でも還元を上積みする運営は、政策保有株という「ストック原資」が支えているとも言える。原資が枯渇する局面では還元ペースが落ちる可能性があり、長期で持つなら本業のフロー利益がどこまで還元を支えられるかを見ていく必要がある。

個人投資家が意識すべき3つのポイント

  1. 需給インパクトは銘柄ごとに差がある。 東京海上HD(発行済株式の6.9%)とMS&AD(6.5%)は買付け規模が大きく、1株当たり利益の押し上げ効果も相応に出る。SOMPOは1.90%にとどまるが、減益局面での50円増配というシグナルは別の意味で重い。
  2. 還元原資は政策保有株売却に依存している。 3社とも残高ゼロ化を進めており、売却益が当面の還元を支えている。Bloombergによると今期の売却ペースは前年比3割減る見込みで、原資の枯渇後を見据えた本業利益の動向が長期では重要になる。
  3. 2027年3月期の利益方向が3社で分かれた。 増益は東京海上HD(+56.2%)、純減益はSOMPO(-23.4%)、横ばい圏がMS&AD。本業の保険損益や海外事業の状況をセクター内で比較しながら、配当利回りと業績モメンタムのバランスでどの銘柄を選ぶかを判断したい。

引用元

ホッホ博士
マネー比較ラボ編集部
金融市場・世界情勢・仮想通貨・FXに関するニュースや解説記事の作成、金融サービスの比較を行っています。
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